こんにちは、Perl大好き おがた (@xtetsuji) です。
簡単にまとめようと思ったのですが長文執筆癖が発動して、また熱く長く書いてしまいましたので、時間のない方は太字部分を中心に遠慮無く読み飛ばしてください。
今年も行ってきました、プログラミング言語Perlの祭典「YAPC::Asia Tokyo 2012」(以下YAPC)。なんと今年は「モダンmod_perl入門」というタイトルでYAPC初トークまでさせていただきました。最初はこんな古風なネタで発表枠なんて頂けないと思っていましたが、結果的に発表枠を頂けて本当に感謝です。トークした雑感は後述。トーク内容の突っ込んだ詳細については、別のブログ記事として書こうと思います。
YAPCは2007年から毎年参加していますが、YAPCは年を重ねるごとに面白さが増しているイベントだなと感じます。それは自分が昨年からHokkaido.pmやHachioji.pmといった地域pmに参加し始めて知人が結構増えたことや、YAPCや大きなイベントへ参加慣れしたこともありますが、やはり牧さん(@lestrrat)、櫛井さん(@941)を始めとした、運営に携わる方々の努力の賜物だと思います。この場を借りて御礼を申し上げます。
勤務先でも昨年からYAPCの協賛スポンサーをさせていただくことになったのですが、櫛井さんには今年も遠路はるばる説明のために来社して頂いてありがたい限りです。前夜祭(もしかしたら懇親会かも)の時にも声をかけてくださって、その時にも色々お話をしたかったのですが、なにぶん忙しい方なので軽く話した程度。牧さんは「モダンPerl入門」という書籍を執筆された方で、今回勝手にこの名前をパクった「モダンmod_perl入門」なんてトークを応募した手前、前夜祭で真っ先に探してトーク採用のお礼と勝手にタイトルをパクったお詫び(?)をしました。運営等で忙しそうだったので、こちらも軽く挨拶をした程度でした。書籍「モダンPerl入門」には2009年の発売当初から本当にお世話になっているので、改訂版への淡い期待など、積もる想いで一杯です。
YAPCで初トークした
先ほども書きましたが今回、2007年から参加しているYAPC::Asiaで初めてトークしました。題名は「モダンmod_perl入門」。
2011年5月にスカイアーク勤務で Hokkaido.pm の主催である @onagatani さんと運命的な出会いをしたことがきっかけで、2011年7月に初めて踏み入れたHokkaido.pm#5(参加レポート)。初の地域pm参加と同時に、公での初の20分トークと、色々無茶をした第一歩でしたが、これがキッカケでこの後から勉強会への参加とトークを積極的に行っていくことが出来ました。2011年10月の「YAPC::Asia Tokyo 2011」では Hokkaido.pm 組が多数YAPCの大舞台でトークしているのを見て「来年こそは」と心に秘めていた夢が、今年実現した格好です。
「やっぱりYAPCの大舞台だと緊張するかな」と思っていたのですが、1年半各所でトークの場数を踏んできただけあって、意外にもさほど緊張しませんでした。ただ、余裕を持って準備したスライドがいじってもいじっても20分枠に収まらないことで、当日までリハーサルをしたりスライドを削ったりサービススライド枠に押しやるセクションを選定したりといった作業が結構大変でした。とはいえ「ネタが出ない」に比べたら贅沢な悩みです。
「モダンmod_perl入門」の詳細については長くなりそうなので、後日別のブログ記事で書く予定です。
前夜祭
YAPCには2007年から行っているのですが、前夜祭に行ったのが昨年2011年が初めてで、それがとても面白かったので今年も行くことにしました。今年は上司と今年3月に入社した後輩も一緒です。
地下2階の一番広いホールに200人くらい集まったでしょうか。昨年同様トークは聴かず、久々に再会した元先輩や元後輩、Hokkaido.pmやHachioji.pmの方々とご挨拶をしたりしました。
YAPCクラスの大きな場所で初対面して深く知り合いに…;というのはなかなか難しいですが、どなたかのブログにも書いてあった通り、地域pmや他の中小規模の勉強会で会った人達やネット上で交友がある同士の「同窓会」としては非常に面白い場です。
噂通りの美味しい食事にお洒落な飲み物が揃っていて、昨年の前夜祭との違いにビックリしました。
1日目に聴講したトーク
聴講したトーク(敬称略)
- What Does Your Code Smell Like? (Larry Wall)
- pixivのサムネイル事情 (bokko)
- Perlでデータクリーニング (Toshinori Sato)
- リアルタイム通知システムの舞台裏 (しんぺい@猫型技研)
- Perl初心者が作ったサーバ運用ツール (りーお@DeNA)
- Perlと出会い、Perlを作る (Masaaki Goshima)
- App::LDAP – 管理者と百台のコンピュータ (shelling)
- DBD::SQLite: Recipes, Issues, and Plans (Kenichi Ishigaki)
- 平均レスポンスタイム50msをPerlで捌く中規模サービスの実装/運用 (Tatsuro Hisamori)
- Perlアプリケーションのベンチマークとプロファイリング (Shunichiro Fujiwara)
- LT1日目
15:35の枠は3本並行しているトーク全てが本当に聴講したくて、身体が3つに分裂すればいいのにとか混乱した挙句、午前中で疲れてしまったのと考えすぎて疲れてしまって、結局決められずにLTthonを覗いたらとても笑わせてもらえて気分転換になりました。ちょうど、札幌 Hokkaido.pm からいらっしゃった @techno_neko さんが Hokkaido.pm Casual の宣伝と見せかけてスープカレーLTで大爆笑を取っていたとき。このトークは最終日に「初代ベストエルティニスト」に選ばれることになったLTでした。詳細はtechno_nekoさんのブログ記事が詳しいです。
聴講したトークの詳細は、上記リンクからスライドと動画を見ることができます。
遅刻してきたので、Perlの父Larry Wall氏のトークは途中からホールに入ったのですが、既に客席はいっぱい。後ろのほうの席からライブコーディング(もしくはコーディングの録画)を眺めていました。「あぁ、Perlの父も我々と同じようにシェルを使いエディタを使ってPerlを書くんだー」って親近感が湧いたり。Perl6の事は良く分かりませんでしたが、便利そうな構文が結構出てきたりして、「早くPerl6パブリックリリースしないかな」とか「Perl5.xxで構文導入してくれないかな」とか思って聴いていました。
ウェブ上での画像処理とかにも関わったりした経験から、pixivの裏側はどうなっているんだろうと興味を持って聴いていたのですが、mod_small_lightというApacheモジュールとは面白い。Apacheモジュールの積極活用事例は聴いていて興味深いです。nginxへの置き換えなんてことも触れられていて、ngx_small_lightを移植したとか、個人・会社ともに、そのパワフルさに脱帽です。
mixiの新入社員Masaaki Goshimaさんが新しいPerl5の実装系を作ったという話は当初から興味深くて聴講に行きました。まだ数値のみで文字列、特に正規表現周りの処理が未実装(に近い?)状態らしいので、今後の展開に期待。mod_gperlなんてApacheモジュールができたらいいですね。
りーお@DeNAさん(@riywo)のトークも聴講しました。日本人による英語のトークでしたが、いつか私も英語でトークしたい欲に駆られました。ヒアリングまわりで英語のトークについていくのが大変でしたが、スライドのデザインも群を抜いてカッコイイ。Hokkaido.pmでもお話をうかがっていたToryoの公開が待たれます。
Kenichi Ishigaki(@charsbar)さんのDBD::SQLiteのトークは、普段利用しているDBD::SQLiteにはこんなにも沢山の機能があって、こんなにも苦労があるのかといったことを知れた良いトークでした。Tim Bunce氏、Adam Kennedy氏といった神々も集結して石垣さんと英語で議論しているさまは、まさに遠巻きに「すごいなぁ」と思わされました。
その後、Tatsuro HisamoriさんのFreakOut!の裏側、Shunichiro Fujiwaraのベンチマークとプロファイリングといった話が続き、今年のYAPCはパフォーマンスをテーマにした年だなぁということを実感。FreakOut!での合言葉「古典的でも地道にやる」は響く言葉でした。またFujiswaraさんはISUCONでも優勝したほどのパフォーマンスまわりの著名な専門家。両者のトークを聴講してパフォーマンスへのさらなる意識を高めました。
その他、聴いていて印象深かったトークは全部。ハズレ無し。1日目も2日目もできれば全部のトークを聴きたいと思っていたくらいですから。個人的にはトークの並列数を減らして1週間くらいYAPCやりつづけてもいいんじゃないと思うくらい。
1日目の懇親会
前夜祭の人数の比ではないくらいの人が集まって、食事も行列状態。すごかった。大群衆に揉まれるのが苦手な人間なので苦労はしましたが、前夜祭同様、いつも会わない方やTwitterやブログでのみ面識のある方との交流がメインでした。食事は早々になくなっちゃったし。
スカイアークの小林社長が会場入りして、乾杯の音頭を取ったのは印象的でした。やはり力強い方だなと。実はスカイアークの小林社長とは昨年の5月の初対面ぶりの再会。久々にお会いして道民トーク・十勝帯広トークで盛り上がりまくりました。楽しかった。その場の勢いで北海道つながりの飲み会を東京でやろうという話が実現してしまったくらい。
2007年からYAPCに参加していますが、今まで引っ込み思案で、Larry Wall氏が来日していても近寄れないでいたのですが、今年は大胆に行こうと、一緒に写真撮影をお願いして快諾していただけました。嬉しかった。
飲み物は潤沢にあったので飲みまくったし、疲れたし(もともと疲れやすい)、明日自分のトークあるしで、2次会等には参加せずに懇親会終了後はそのまま帰宅しました。
2日目に聴講したトーク
聴講したトーク(敬称略)
- CPANに恩返ししよう (あずまさとし)
- 10 more things to be ripped off (Tatsuhiko Miyagawa)
- Perlハッカーは息をするようにCPANモジュールを書く。 (Daisuke Murase)
- Skype効率化 (akiym)
- Perlでひとつサービスをつくってわかったこと (Nozomi Mikami)
- very simple ORMapper Teng (Masahiro Chiba)
- LT2日目
- How Perl Changed My Life (Gosuke Miyashita)
並行トークがなかった「Perl 今昔物語」は、豪華メンバーゆえ聴くべきか悩んだのですが、その時間にLTthonで「地域pm、勉強会、交流会 ミートアップ」をやっていて、悩んだ挙句「地域pm、勉強会、交流会 ミートアップ」のほうを聴きにいきました。自分が対外的な活動の起点となったのも地域pm(Hokkaido.pm)だったので、昨年くらいからアツい地域pmの現状を知っておきたいと思ったからです。結果的に北はHokkaido.pmから、南はOkinawa.pm(まだ開設準備中?)まで、各地域pm主催者が一堂に会してトークを交わす貴重な場となりました。LTthonの司会を務めていた@uzullaさんの引っ張り方も本当に上手い。会場は笑いが絶えませんでした。
2日目に @ytnobody さんと @typester さんの、CPANを主題とした話が連続でありました。聴いていると、「CPAN Authorになってみたいな」といった野望がふつふつと湧いてくるではありませんか。恩返ししたい!息をするようにモジュール書いてドキュメントで熱い想いをぶつけたい!両トーク、それぞれの側面で話が被っていなくて、両方聴講して熱意2倍。この熱が冷めないうちにPAUSE IDを取って、コンセプトで書いたmod_perlモジュールを成長させてどんどんコミットしていきたいと思ったのでした。
日本が誇る世界的ハッカー @miyagaawa さんのトークは、先日の LL Decade の基調講演で聴いた内容に近いものでした。「PythonやRubyから学ぶ事は多い」というのは、PSGIやPlackの誕生からも分かる通りです。LL Decade で miyagawa さんのトークを聴いた後、私も言語へのこだわりを減らして、他の言語から学べるものは学ぶという姿勢を持つようにしています。それは私のトークにも、mod_mrubyをmod_perlへ新たな刺激を与える良い存在と紹介したりといった部分に影響を与えています。
北海道が誇る高校生Perlハッカー @akiym さんは Skype API を使ったボット作成といった独自性のあるトークを披露。若いのに本当にすごい。この文章書いているオッサンがトークしはじめたのは30歳過ぎてからだよ…;。Hokkaido.pmでも毎回彼のトークは楽しみです。
正直自分の発表直前は、Room 2で給電しながら最後のスライド調整にまわろうとしていたのですが、ついついRoom 2 の話が面白いので聴き入ってしまいました。
Nozomi Mikamiさんのトークはタイトルが初心者枠で正直最初は期待していなかった(非常に失礼)のですが、中学生の頃からのプログラミングに対する強い熱意、そしてインターネットサービス企業(paperboy&co : ペパボ)にカスタマーサポート職で入った後にもその熱意が冷めず、業務外で社内の技術者に質問をしてPerl CGIで小さなブログサイトを完成させていくといった内容。どうしても男性中心になってしまう技術者界隈ですが、プログラミング初心者の女性が果敢に突き進むそのお話、その内に秘めた情熱に心打たれました。初心忘れるべからず。
Masahiro ChibaさんのTengのお話は、Tengのとても分かりやすい導入として参考になりました。といっても、この時間は私の発表の直前だったので、頭に入ってきた内容が少ないのですが、後でスライドを見返して良い資料だなと振り返り。会場にはTengの作者である @nekokak さんもいらっしゃって、発表者のChibaさんは緊張したかと思いますが、時々交わされる作者と発表者とのやりとりにライブ感を感じました。社内でも私に影響されて後輩が社内ツールでTengを使おうとしているので、そこでも良い資料になりそうです。
みんなLTがうまい
1日目のLT、2日目のLT、そして併設の会場でのLTthon。5分間の枠でどれだけ聴衆を楽しませるか。世間でもLTのノウハウがたまってきてはいますが、本当にみなさんLTがうまい。今回も @hiratara さんによる「Perlでおねえさんを救ったお話」や、女性による半ば下ネタかと思わせるような人生ネタ、スカイアークスポンサーセッションによる @onagatani さんコスプレ付きの北の国からネタ「帯広から、愛」等々、本当に笑わせていただきました。
聴講したトークと今年のYAPCのまとめ
今回は特に流行が無くて寂しいとか今後のPerlへの不安といったものも見聞きしたりしましたが、それだけPerl5やそのエコシステムが成熟してきた現れではないかと思います。それは他のLLも同様ではないでしょうか。@charsbar さんが、CPANコミット数がgemコミット数に抜かれつつあるといったLTをしましたが(カウント方法には異議もあるようですが)、今後の推移を見守りたいところです。仮にもPerlの先が暗いのであれば、今年のYAPCはこれだけ多数の協賛スポンサーも聴衆もスピーカーも集まる大規模カンファレンスにはならないでしょう。
逆に過去を振り返ると、Catalyst/DBIC/TT一色の年や、Moose一色の年などもありました。ただ私は各会場で「Moooooooooooooose!!」と叫んでいる光景を見て「ちょっと行き過ぎ、その流行を追っかけている人じゃないとついていけないよこれは…;」と若干辟易としていた側だったので、今年のような、ある種成熟してトーク内容も良い意味で様々なジャンルがあった今年のYAPCは、心の底から楽しめました。
今年の特徴としては、例年以上にPerlに関わらない話が多かったように思えます。特に、Tim Bunce氏の来日にあわせてか、プロファイラやチューニング等、パフォーマンスに関わる話が多かったように思えました。50ms or die! の FreakOut! さんが目立っていたのも印象的です。「平均レスポンスタイム50msをPerlで捌く中規模サービスの実装/運用」等でも繰り返された「古典的でも地道にやる」は今年のYAPCを代表する名言の一つではないでしょうか。結局、パフォーマンスを追求するとどのLLでも手法は同様になってくるわけで、そういう意味でも今年のYAPCはPerlを書いたことがない人にも楽しめるイベントだったと思います。当然ながら、運営の方々の多大な努力や、LTthonといった画期的なイベントの存在が、今年のYAPCを例年以上に盛り上げた事に異論は無いでしょう。
その後に勝手に極貧飲み会
80人規模で有志による後夜祭が予定されていたのですが「参加したとして、自分のトークが失敗して恥さらしの場になったらどうしよう」とか「1日目の懇親会が人だらけで、人混みに疲れたから2日目は遠慮しようかな」といった考えが働いて申し込みしませんでした。
そのかわり、@onagatani さんを中心とした Hokkaido.pm メンバーが #極貧飲み会 をやろうとしていたので、そちらに合流。最初は4人での飲み会でしたが、途中で @hiratara さんが合流してくれて、こじんまりと盛り上がれました。私の趣向でもありますが、数人規模での飲み会は個々人とゆっくりお話もできて、好きです。 #極貧飲み会 万歳!
これから
とりあえずPAUSE IDを取得してCPAN Authorへの道を一歩踏み出そうと思いました。
また、後輩とは「今年のYAPCで得られたことは何か?」といった話を何度かしていて、我々がこれからすべきことを再認識させられた次第です。
あと、今年のトークがそこそこ好評だったので、来年もトークしたくなりました。mod_perlネタはもういいとしても、今のところnginxのHttpPerlModuleやFastCGIなどmod_perlと似たレイヤーにいる他の興味深い事柄の最新事情を追いかけてそれを発表してみたいですね。来年のYAPCに向けて、勉強と実践、そしてトークの場数をさらに踏む活動の始まりになりそうです。
私と交流してくださったみなさん、トークを聴講しにきてくださったみなさん、楽しいトークを提供してくれたみなさん、そして運営のみなさん。みなさん本当にありがとうございました。来年もYAPCがありさえすれば絶対に参加します。繰り返しになりますが、本当にありがとうございました!