こんにちは。2月になって心新たに邁進していきたいと考えている おがた です。
以前からEvernoteに書いていた「NMLノート」を2012年になってから1ヶ月単位でブログで公開することにしようかなと思い立ちました。今回が記念すべき1回目。
「NMLって何?」という方に説明。時々Twitterで私がつぶやいたりしていますが、正式名称は NAXOS Music Library。月額1890円でNAXOS自身をはじめとした40,000枚以上のクラシック音楽(と一部ジャズ音楽)の膨大なライブラリが聴き放題となるサービスです。これは安い。とても安いと言われているNAXOSのCDでさえ1000円弱なので、1ヶ月2枚聴けば元が取れる計算になります。
CDにお金を払うことに特段の抵抗はないのですが、買ってきたCDをリッピングする手間、クラシック音楽特有のデジタル管理上の諸問題(後述)、そして買ってきたCDを保管する場所の確保の問題や売る手間…、といったことを諸々勘案した結果、月額1890円のNMLに加入して、クラシック音楽のCDは原則的に買わない・借りない事にしました。
上述で「クラシック音楽特有のデジタル管理上の諸問題」と書きましたが、クラシック音楽が持つ情報は他のジャンルの音楽よりも特に複雑だと感じます。例えばベートーヴェンの有名な第5交響曲(いわゆる「運命」)一つを取っても、演奏家違いの同じアルバムが大量にあったりします。協奏曲となると、指揮者・独奏者・オーケストラと演奏家が増えて、とてもアーティスト欄の一行で管理しきれません。同じ悩みを持っている人やこういう問題を放り投げた人が世の中には様々おられるようで、CDDBから降ってくる情報に一定のフォーマットとはあるとは到底言えず、時に全く適当な情報さえ降ってくる始末。結局、自分ルールを作って曲名を手動入力していくことになるのです。これが結構骨が折れる。でもそうしないと後で一定のルールで探せない。であれば、いっそのことCDから完全に離れて、NMLや生演奏に行こうではないか。そういう風に思ったのです。
ちなみに、クラシック音楽以外の音楽については、iTunesストアを利用したり、オンラインレンタルサービスでCDをレンタルしたりしています。でも、保管コストを考えてCDを買うことは本当に稀になりました。買うCDと言えば、iTunesストアにもオンラインレンタルサービスにも無いCDでどうしても欲しいもの、またはNMLで相当ヘビロテしているクラシック音楽のCDくらいです。
余談はこのくらいにして、2011年1月にNMLで聴いたアルバムをご紹介します。今月はそれほど聴いていません。
ビレット・コンチェルト・エディション 1 – シューマン:ピアノ協奏曲/グリーグ:ピアノ協奏曲(ビルケント響/ヴィト)
http://ml.naxos.jp/album/8.571270 (2012/01/09)
王道のカップリングですね。シューマンとグリーグのピアノ協奏曲イ短調。私のGoogle日本語入力なんて、「ピアノ協奏曲」と打った時点で「イ短調」が補完されるくらい。グリーグは先輩であるシューマンのピアノ協奏曲を参考に同じイ短調のピアノ協奏曲を作ったと言われるくらいなんですよ。
私はあまり演奏家チョイスはしないので、演奏家のことはよくわかっていないのですが、両方の曲の第3楽章の盛り上がりは名演だと思いました。
帯紹介文より:協奏曲のレパートリーだけでも100 曲以上。驚異のレパートリーを誇るトルコの女性ピアニスト、イディル・ビレット。ここでは、極めてオーソドックスな2 つの協奏曲を華麗に弾きこなします。2 曲とも、滝のようになだれ落ちる冒頭のパッセージが魅力的ですが、陰鬱さの中に激しい情熱を秘めたシューマン、凛とした表情と熱い心を併せ持つグリーグと、その表現はかなり違いを際立たせないといけません。ビレットの演奏は全く文句なし。そして、オーケストラをまとめるのはNAXOS きっての名手、アントニ・ヴィト。どちらの曲も終楽章の盛り上がりが半端ではありません。
ディッタースドルフ:3つの標題シンフォニア(ファイローニ管/グロット)
http://ml.naxos.jp/album/8.553975 (2012/01/09)
私は「古典派」と呼ばれる時代のクラシック音楽が好きなのですが、「古典派」の作曲家で知られているのは、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンくらいで、その他の作曲家はすっかり歴史の中に埋もれてしまっています。古典派の前の「バロック時代」や、後の「ロマン派」はよく知られた作曲家が多いのに…、と子供の頃から不思議に思っていました。実際、他の時代と同じくらいの時代のはず。それもそのはず。クラシック音楽の商業主義の中では、売れる知名度の高い曲ばかり演奏者を変えて出すという風習がありました。NAXOSというレーベルは、演奏家や作曲家の知名度が低くても良い曲であれば積極的にアルバムにしていこう、という素晴らしい旗印のもと立ち上げられたレーベルです。
このディッタースドルフも古典派の作曲家ですが全くといっていいほど知名度がありません。NMLを漁っていて、たまたま見つけたようなもの。でも、このシンフォニアは聴き心地がよかったです。ディッタースドルフの他の曲も開拓していこうと思いました。
帯紹介文より:ウィーン生まれの作曲家、ディッタースドルフは極めて多くの作品を残しましたが、ほぼ同時代のハイドンに比すと、その僅かな古臭さのゆえか、無視された存在になりがちです。しかし実のところその作品は、ハイドン顔負けの新奇性が聴くものを驚かせるほど、フレッシュな魅力に溢れています。「感情の戦い」の「狂気」や「憂鬱」といった楽章で半音階的進行を交えながらの暗い響き、「作曲家の錯乱」(凄いタイトル!)冒頭での激しいシンコペーションには、ドッキリするものがあります。一方舞曲調の曲が中心ということもあり、明るい楽章はどれもウキウキするような音楽です。
ハイドンやモーツァルトは名曲中の名曲をいくつも作ったことは事実ですし、もちろん悪態つくわけではないのですが、彼らの駆け出し時代に作られた素人の色がまだ垣間見える曲を商業主義がフィーチャーするのであれば、こういう歴史に埋もれてしまった古典派の作曲家の円熟期の作品ももっと掘り出して欲しいと思います。その点においてNAXOSの姿勢は素晴らしい限りです。
モーツァルト:交響曲第38番「プラハ」, 第40番
http://ml.naxos.jp/album/7082 (2012/01/22)
モーツァルトの後期交響曲の傑作の2曲。
もちろん、CDも何枚も持っていてリッピングもしているほどの有名曲ですが、プラハの第一楽章で演奏と音源が良くて、疾走感を感じるほどの速度で演奏された曲がないか探してみて見つけたのがこの一枚。
後期から晩年にかけてモーツァルトの交響曲のフーガといえば最後の第41番「ジュピター」の最終楽章が有名で、本当に神がかった名曲だと思います。フーガ好きで古典派好きにとっては何度聴いても夢ごこち。ただ、プラハも第1楽章の展開部で展開されるフーガ(フガート?)も緊張感があって好きです。遅い速度の演奏もありますが、その展開部が活き活きとして聴こえるのは適度に速度のある演奏だなぁとこの一枚を聴いて思った次第です。
シューマン:ピアノ協奏曲/ドヴォルザーク:ピアノ協奏曲(ヘルムヘン/ストラスブール・フィル/アルブレヒト)
http://ml.naxos.jp/album/ptc5186333 (2012/01/22)
ドヴォルザークのピアノ協奏曲が聴きたくなって、検索して一番上のものをチョイス。名演かどうかはよく分からないけど、音源は良かったです。シューマンのカップリングのほうもツボを押さえたオーソドックスな良い演奏。しかし、このカップリングは珍しいですね。普通なら前述のようにグリーグがきそうなものなのに。
ちなみに、ドヴォルザークは交響曲作家として有名です。日本では第9番の「新世界より」がとても人気。そのいくつものフレーズを聴いたことがない人が居ないくらいです(第2楽章の「家路」や、第4楽章の冒頭等)。協奏曲としてはチェロ協奏曲が特に有名ですが、その他の協奏曲はあまり注目されず演奏頻度も低いようです。確かに、私も生演奏で聴いたドヴォルザークの協奏曲はチェロ協奏曲だけかも。チェロ協奏曲には劣るかもしれませんが、ピアノ協奏曲もドヴォルザークの面目躍如が散りばめられた名曲だと思います。
ハイドン:鍵盤のための協奏曲集(ショルンスハイム/デュッセルドルファー・ホーフムジーク/ウティガー)
http://ml.naxos.jp/album/c5022 (2012/01/23)
古典派の作曲家の協奏曲を聴こう!という一環。
古典派の時代は、鍵盤楽器が入れ替わった時代でもありました。オルガンやチェンバロ(ハープシコード)が主流だった時代に、当時のピアノ(フォルテピアノ)が入ってきました。まだ当時のピアノは今のピアノような豊かな音色ではなく、ちょっと乾いたような音色です。
ピアノがない時代に作曲されたバロック時代のバッハの「チェンバロ協奏曲」を「ピアノ協奏曲」として演奏したりといったアルバムは多い(チェンバロ奏者よりもピアノ奏者のほうが大量にいるでしょうから)ですが、個人的にはちょっとなぁ…と思います。全て古楽器を使えとは言いませんが、チェンバロとピアノは完全に別だろうと。
このアルバムを聴こうと思ったのは、写真にも顔を出しているショルンスハイムさん。フォルテピアノ、オルガン、チェンバロと、マジ演奏多彩。帯紹介文によると音楽学者でもあるらしい。しかも音を聴いた限りでは当時のピアノを使っているっぽい。同じ鍵盤楽器だと言えど、ここまでプロとして各楽器を演奏出来る人はいませんし、過渡期だったハイドンの協奏曲を当時の楽器で演奏しようとしているその姿勢は素晴らしいと思います。今後もウォッチしたいです。
帯紹介文より:ハイドンのピアノ・ソナタ全曲演奏に偉大なる金字塔を打ち立てたショルンスハイム、今回は協奏曲で目覚ましい活躍ぶりを見せてくれます。2009年のハイドン・イヤーに合わせて録音されたこのアルバムでは、彼女は3種類の楽器を弾き分け、各々の曲の美質を明らかにします。国際的に音楽学者としても名高い彼女だけに、楽器の特性を存分に生かした輝かしい演奏と解釈は、かなりのハイドン通でさえうならせること間違いありません。グルックやホミリウスなどの録音で高い評価を受けている新デュッセルドルフ宮廷楽団のバックも冴えています。指揮をしているのはヴァイオリニストでもあるウィスコンシン生まれのメアリー・ウティガー。ムジカ・アンティクワ・ケルンやレザデューなどのバロック・アンサンブルと共演を重ねる実力派です。
チャイコフスキー:交響曲第2番「小ロシア」, 第3番「ポーランド」(ソビエト文化省響/ロジェストヴェンスキー)
http://ml.naxos.jp/album/ALC1103 (2012/01/31)
NAXOS推薦盤だったのでチョイス。古典派だけでなくチャイコフスキーのような後期ロマン派も大好物です。とくに第3番は大好きな部類。確かに録音も良い。
チャイコフスキーといえば、4番、5番、6番の三大交響曲が有名で演奏機会も多いですが、若い番号の交響曲も好きです。4〜6番は自分の心境を表した曲だとすれば、1〜3番を例えるなら郷土愛に溢れているようにも思えます。
…と、1月に聴いたNMLノートでした。せっかく聴き放題で1890円払っているので、苦手な曲を聴く・接するという機会も込めて、NML上で定期的に流されるNAXOSの推薦盤ももっと聴いてみようと思いました。