月別アーカイブ: 2012年1月

Evernoteに「挫折」なんて無い

こんにちは、ライフハックや仕事術の方法論を考えるのが好きな おがた です。

昨年参加したイベントでのプレゼンテーション発表の際に、デスクトップをプロジェクターに投影するテストを行っていたときにEvernoteのウィンドウが映って、イベントの終了後に「Evernote使っているんですね」と話しかけられました。

それこそ世の中の「ライフハック」のサイトやブログには「Evernoteはこう使う」「Evernoteにあらゆる情報を放り込む」といった話題が毎日のように投稿されています。そんな中、私のEvernoteの使い方は…

「オンライン対応のメモ帳」

…くらいの使い方しかしていません。「使っているんですね」と言われて大した使い方をしていないことを正直に打ち明けたのが恥ずかしいくらい。それでも便利です。自宅のWindowsマシン上のEvernoteでメモした内容が、普段作業用のMacBook Air上のEvernoteで見られるし、その逆もできる。さらにiPhoneでも読み書きできる。それだけで満足なんです。

使っていくうちに、少しずつ機能を開拓して行くこともできました。私にも多少の学習能力があったようです。ただ、機能を開拓したと言っても、いくつかのタグを作ったことと、頻繁に見るバスの時刻表をウェブクリップしたことくらい。アイデアメモをのノートを作ってアイデアを書き溜めるとか、NMLで聴いたクラシック音楽の感想を書き溜めるノートを作ったとか、別にEvernoteでなくともテキストファイルとメモ帳をフォルダに分類するだけでもいいくらいです。ジャケット画像をノート中に取り込むくらいはできて、メモ帳以上のことがWikiやブログよりも手軽にできることに少々驚きました。でも使う動機の一番は、オンライン対応でEvernoteを入れたどの端末でも同じものが見られる、それがいい。大した量のデータも入れないので、当然ながら無料プランです。

こと、一昔前からの「ライフハック」ブームで、ライフハックサイトやライフハックブログは日々増加、それこそアルファブロガーによって注目のサービスやアプリは徹底的に使いこなし術が開拓され、さらに次々にリリースされるアプリやサービスをことごとく拾って使って紹介していく。いささか情報過多とも思える時代のような気もします。個人的に残念ではありますが、そもそも「ライフハック」という言葉自体が既に使い尽くされバズワード化しつつあるとも思えます。

特にEvernoteの場合、注目されているサービスだけあって、巷で紹介されている「使いこなし術」の多さは驚くべきものがあります。今やパソコン雑誌やビジネス雑誌の記事だけでなく、Evernoteの書籍が何冊も登場しているくらいです。必然的にそういう情報を見たりしますが、個人的感想として「ちょっとやり過ぎでは…」と思う使い方もあったりします。

ライフハック全般に言えることなのですが、これらの情報を「あるべき論」と捉えて、それを試みたものの出来ないから「自分はダメだ」と思う風潮もあるようですが、それは違うと思います。本来は方法論の一つでしかないはずなのですが、著者の思い入れの強さからか「あるべき論」にしか見えない記事も少なくありません。それが原因か、ライフハックサイトに書かれた膨大なEvernote使いこなし術に圧倒されて、「Evernoteに挫折」という概念まで生まれているようです。

本来は、多くの使い方、多くの機能の紹介の中から、自分が必要だと思った機能だけ使えればいいじゃないですか。そして自分に必要が無ければ使わなければいいだけ。探せば自分に合った代替はきっとあります。もしかしたらそれはアナログツールかもしれない。

多くの人が使っているソフトウェアを例に挙げれば、Windowsのメモ帳に「挫折」する人がいないように、また膨大な機能があってそれを森羅万象を知り尽くして使いこなしている人が世界中に何人いるのかと思わせるWordやExcelに「挫折」する人がいないように、Evernoteに「挫折」することはおかしいことです。メモ帳が低機能だから使わなくなったからと言って「挫折」したわけでもないですし、Excel全体のほんの少しの機能しか使えないからと言って「挫折」したわけでもないでしょう。

「Evernoteに挫折」することは、「Excelの森羅万象の機能を使わないとExcelを使ったことにならない、という無理難題を真に受けてExcelを触るのが嫌になる暗示をかけられる」という比喩に似たものがあると思います。今まで述べてきたことを振り返れば、Evernoteに「挫折」なんて無い。いかがでしょうか。

この記事を書く際に特に参考にしたわけではありませんが、TogetterにEvernoteと挫折についてというまとめがあります。様々な方の意見がまとめられており興味深いです。

最後に。自己言及的でありますが、今まで述べたことも「あるべき論」ではなく「方法論の一つ」に過ぎない、私という一個人の考えの一つに過ぎないことも心に留めておいてください。Evernoteはオンライン対応のメモ帳程度のように使わないといけない訳でもありませんし、Evernote使いこなし術に邁進してもいいし、Evernoteなんて存在そのものを忘れてもいい。この私の考えの中で面白い・興味深いと思う部分だけを「つまみ食い」してくれれば嬉しいだけです。

私もそうですが、この情報過多の時代、全てを取り込もうとして消化不良になりがちです。気楽に情報の取捨選択をして、自分にあったものだけを取り入れるだけでいいんだと思います。私もしばらくはEvernoteを使い続けて、余裕があれば少しずつ使ったことの無い機能を試してみようと思います。

今のIT時代は情報の量もスピードも圧倒的ですが、急いだり焦ったりせず、でも着実に少しずつ成長していこうではありませんか。

なぜ「ホウレンソウ」ではなく「ゆでたまご」なのか

こんにちは、食べ物でも「ゆでたまご」が好きな おがた です。

以前、「ホウレンソウ」が嫌いとTwitterに投稿をしました。

[tweet https://twitter.com/xtetsuji/status/159143577241399296]

正直、投稿するとき「社会人の基本をないがしろにしやがって」とか批判されるんじゃないかと内心ビクビクしていましたが、TwitterでもFacebookでも好意的な意見ばかりで安心しました。

その後に、フォローの意味を込めてこんな投稿をしました。

[tweet https://twitter.com/xtetsuji/status/159146287428677632]

画像からも分かる通り、2009年3月に私自身が考え出したもの。

Twitterでは余白が少なくて語れなかったことですが、なぜ「ホウレンソウ」ではなく「ゆでたまご」なのか。これは書きたいと思っていたことなので、このブログに書いておこうと思います。

なお、以下はあくまで個人的な感想です。真っ向から「ホウレンソウ」という言葉を滅ぼしてやろうとか、そういうことは思っていません。批判や改善点は好意的に受け入れいますが、どうか若造の戯言だと思って優しく読んでやってください。

「ホウレンソウ」のダメなところ

非常に個人的な感情かもしれませんが、「ホウレンソウ」という言葉はお偉い上層部の人達が下々の部下から楽して情報を引き出すという文脈で使い古されていることが最もダメだと思う点でしょうか。

よく考えてみると、部下が上司に対して「〇〇(上司の名前)さんは「ホウレンソウ」がなってないよなぁ」という文脈で「ホウレンソウ」という言葉が使われることって無いですよね。これが「下から上へ楽して」を体よく表現した「ホウレンソウ」の真実。でも、実際にマネジメント能力が欠如した上司や、すぐに仕事を抱え込んで部下に秘密を作ってしまう上司というものが確実にいて、部下に情報を下ろしてくれないという事態は意外と存在します。当然ながら、会社という組織をまわすためには上司が部下に対しても情報を提供する義務はあるわけです。「ホウレンソウ」という言葉は、生ぬるい文脈で使われ続けてしまい、そういうことすら言及できていない。既に腐っている。そう思えるわけです。

次に、これには反論も多いかと思いますが、「報告」と「連絡」の違いが曖昧、それを明確にしたところで「報告」も「連絡」も今のITの世の中では使うツールの違いでしかない、という点。

確かNHKの「会社の星」という番組でしょうか。20代の若い新入社員に社会人のイロハを教える番組。そこで「ホウレンソウ」の特集が組まれていた回があって観ていたのですが、そこに出てきた営業のお偉いさんらしき人が本気で最低でした。ここでは「営業部長」と呼ぶことにしましょう。

その営業部長は常に国内や海外を飛び回っているらしく、会社にいることは本当に稀。で、会社に帰ってくると、たくさんの部下がその営業部長に「ホウレンソウ」をしに行くという絵面でした。それだけなら忙しくて儲かっていそうな会社だなぁ程度の感想でしかないのですが、問題なのはその営業部長の偉そうなこと偉そうなこと。部下の報告がダメだと一蹴すること一度や二度ではない。部下のインタビューを聞いても、ある種神格化されて恐れられているんだなと思わせる印象。そのために、その営業部長が帰ってくる前から、部下たちはいかに手短に的確に報告ができるか、必死に時間をかけて資料作りをしているという絵面だった記憶があります。

何が問題か。

  • 「ホウレンソウ」以前に、この営業部長は直属の部下が明らかに多すぎです。だって、自分が「ホウレンソウ」を「受信可能な時間」に明らかに部下のそれをさばききれていないんですから。比較的大規模な会社だったと絵から見受けられましたが、それを改善出来ていないことには組織的な問題が見え隠れします。「会社にいる時間を適度に短くすれば自分の神格化がされて既得利権を得られるからそうしている」と思われても仕方がないです。
  • 部下が「ホウレンソウ」の資料作りをする時間が無駄です。部下たちは営業部長を恐れているので、報告事項は相当時間を掛けて練りこんでいるようです。もう一度言います。時間の無駄です。
  • 無駄に叱りつけたり怒ったり無下に一蹴したりすることで、部下の相談意欲をそぎます。この手のタイプの人は、時々飲み会を催したりして「飴と鞭」を使い分けて人心掌握をする傾向にありますが、それでも私はこんな上司に積極的に相談したくありません。
  • なぜこの営業部長は、会社に居ない時間に部下の「ホウレンソウ」を受信しないのでしょうか。まぁ、緊急の場合は電話くらいは使える脳みそはあるのでしょうが、移動中は常に忙しいのでしょうか。そんなことはないでしょう。部下から、メールでもいいしIMでもいいし、もっと良いのはCMSの類でも導入して、随時部下からの「ホウレンソウ」を聴くことです。長い報告を体裁をまとめて…では、部下の時間が無駄です。そこには「まとめ方が悪い」「時間がないんだ手短に話せ」という新たな怒りの種も生まれてくることでしょう。それとも単に部下に怒り散らしたいだけなんじゃないでしょうかとすら思えてくる。随時どこに居ようとも、本当にリアルタイムに一行「△△を現在進行中」「□□で行き詰まっている」というストリームが各部下から飛んでくるような仕組みを作ったほうが、その「単なる一行の事実」には無駄に怒る要素が入ることも少ないだろうし(怒ることで神格化や既得利権を進めようとしているのなら別ですが)、部下の時間も確実に節約できます。その「情報の洪水」を捌けないのだとしたら、IT時代の落伍者です。さようなら。

こう並べてみると、IT社会の現在での「ホウレンソウ」特に「報告」と「連絡」はツールの使い方をどうするか、なのだと思います。

報告?簡単に言えばメールを使えばいいですよね。メールが重いと思うならIM、さらにいいのは社内Twitter(Yammerとか)のようなものやIRCがあるといい。私の知らないもっと良いツールがあるかもしれない。連絡だって、グループウェアの選択肢は相当あるし、Google Appsなら無料で使える時代。持っているケータイがガラケーやらくらくホンでも、外から会社のメールをセキュア見るサービスがある時代なんですよ!それくらい金をかけて何とかしなさいと言いたい。そうでなきゃ、組織を変えて部下を減らして、もっと対面で部下と「ホウレンソウ」が出来る環境を構築すべきです。

こう俯瞰していくと、本当に悪く言ってしまえば、「ホウレンソウ」という概念は老害が若造を叩くためのバズワードに成り下がっていると思わざるを得ません。

「報告」と「連絡」は対面で話せないのであればITツールの使い方に移譲できると話を持って行きましたが、心情面が重要な「相談」はツールだけでは解決できないものでしょうね。そもそも「相談」を聴かない上司(最悪「俺そんなこと知らないし」と真顔で他人台詞を吐く上司は世の中にいる)をどうするか「ホウレンソウ」は回答を示してくれません。だって、「ホウレンソウ」は「おかみ」のためのバズワードなのですから。ただ、あまりにも普段から怒り散らしていたり他人事のようにしていたら、相談意欲がそがれるのは明らかです。もちろん、部下の失態にも怒る要素があることはままありますが、これは前述のように「報告」「連絡」を綿密に行う(行ってもらう)ことで多少は解決できることではないでしょうか。

勘違いしないで欲しいのは、「部下を甘やかせ」と言っているわけではないのです。ただ、わざわざ自分の怒りを増長するような貧相な「ホウレン環境」の中で無駄に怒るのは損だと言っているだけです。自戒の意味を込めて言うことですが、仕事云々関係なく怒るということは損です。私も(万年平社員なので部下を持ったことは今まで一度も無いものの)ダメな後輩を叱った事はありますが、それは最終手段でしたし、後輩が至らない部分は最後まで優しく導いたつもりです。そうしないと、常日頃から怒り散らしている人に積極的に相談したいと思う人なんて、そうそう居ないでしょう。

ここまでのまとめ

  • 報告:対面で話そう。対面で話せる時間が無いのであればIT技術を使って何とかしよう。
  • 連絡:グループウェアを使おう。
  • 相談:怒ることは損。相談を遠ざけるどころか人望すらを下げる。

「ホウレンソウ」にはカバーできない領域があることが見えてきました。

「ゆでたまご」の登場

色々な体験の中で「ホウレンソウ」は使えないなと思ったわけですが、何かを否定するのであれば代替案をあげなければならないのは世の常だと思うのです。そこで「ホウレンソウ」に足りないものはなんなのか考えました。また「ホウレンソウ」と同様に、標語っぽく頭文字を並べて食べ物の名前として覚えられるものがいいなと思って思索を巡らせていたら、手元にあったのがコンビニで買ってきた「ゆでたまご」でした。

「報告も連絡も何らかの社内情報ストリームで言い放っておくでいいよなぁ」とか、「言い放った大量の言葉を検索する仕組みはITに譲るとしても、どこかでまとめないと、上司でもないけど後でその仕事を引き継いだ人が情報を得る時に困るよなぁ」とか、語呂合わせのために信頼している上司に仕事をする上で何が大切かヒアリングしたりしながら、ひとつの標語が完成しました。それが「ゆでたまご」です。

  • ゆ:言っておく
  • で:できなくても (報告などをしたり言っておく)
  • た:確かめる
  • ま:まとめる
  • ご:誤解がないように務める

この「ゆでたまご」は誰が誰に対しても心がけるべきこととして打ち立てました。なので、私のような万年平社員が上司に「ゆでたまご」をすることは当然として、上司も部下に対して「ゆでたまご」をして欲しい。そういう願いを込めました。作った私が「悪い文脈」で使うことをよしとしていないのでまだ腐ったりはしていないと自負していますが、そもそも今回Twitterで発言するまでは、社内どころか私の机を良く見る隣の上司くらいしか存在を知らない標語でしたから、現在進行形で新鮮です。

まずは「ゆ:言っておく」。最初から少し語呂合わせが強引ですが、ホウレンソウで言及されていた「報告」も「連絡」も、カナメはこれです。特に「声を出して言葉を出せ」というわけではなく「迅速に伝えろ」という意味合いを持たせています。うちの会社には社内IRC環境がありますが、私は日頃「◯◯開始しました」「◯◯終了しました」「〇〇簡単だった」「〇〇手ごわい」という発言をそこでバンバンしています(最近では私くらいしかしないのが寂しいのですが…)。上司はそれを見ていて、私が何をしているのかリアルタイムに把握できる。ひたすら事実を述べる短文をとにかく迅速に伝えることが大切です。この変化が激しい世の中、余程忙しいとかでない限り、これくらいの情報ストリームは出来る限り受け取って欲しいし受け取りたい。これを実現するツールにメールは少々「重い」ですが、物理的に同じ空間にいる場合には本当に声を出してこまめに伝えたりすることでITツールを使わなくても実現可能なことでしょう。ITツールで言えば、IMや、社内Twitter(Yammerとか)的なもの、おすすめなのはIRCがこれを実現させてくれるツールではないでしょうか。ITツールを使えば物理的距離が離れていても情報共有ができる(ツールにもよりますが)ことがメリットです。そして、アナログの対面対話であってもデジタルツールであっても逐一記録を残すことは重要です。メモを取るなり機械的にログを取るなりしておくべきです。これの実践によって膨大な情報ストリームが蓄積され一種の共有知が出来上がることを考えると、デジタルツールでのログ収拾を前提として、さらにそれに対して機械検索が出来るとなお良いでしょう。

そして「で:できなくても」。ホウレンソウは「報告」の重要性を説いていますが、特に組織が大きくなると都合の良いことしか報告をしないという人が必ず現れるようです。本当に大切な「報告」は、必要なこと全てを正しく報告すること。ホウレンソウはこれの曲解に言及していません。実際、昔某社でコテコテの大阪弁を発して開発の人間を恫喝してまわっていた営業部署で一番偉く海外の子会社のトップにまで登りつめたとある役員は、当時の社長に対して良いことのみ報告して、悪いことはひたすら隠し続けたそうです。ほどなくして、その周辺事業は徹底的に瓦解してその会社全体が傾くことになるのですが、これは「悪いこと」「できなかったこと」をひたすら隠して良いことだけを報告し続けた末路です。「で:できなくても」はできなかったこと等の悪いことも含めて必要なことは打ち明けようという「報告」であり「相談」でもあります。悪いことを溜め込んでしまうと打ち明けづらくなりますが、前述の「ゆ:言っておく」の迅速さとこまめさで言いやすくする狙いもあります。

ここまでは「伝える」ことに重点を置いてきましたが、次は「た:確かめる」です。「ゆ:言っておく」があまりに素早いと、いくらその情報ストリームを観察している人が卓越した情報処理能力を持っていても、忙しい等の理由で見逃すことがあるでしょう。私も大量の情報ストリームを漏れ無く把握する自信はありません。ある程度以上重要なことは本当に相手に伝わっているか確かめることは必要でしょう。また、自分が依頼されて作業していることや他の人に依頼した作業が間違った方向に進んでいないかも定期的に確かめることは大切です。「相談」はホウレンソウの実践者が問題意識を持ったときに初めて発生するフックのように語られることが多いように思えますが、「た:確かめる」はその点を定期的にレビューしようという意味合いも込めています。

こうして「ゆ:言っておく」から始まる活動で大量の情報ストリームが生成されるわけですが、その蓄積された情報は玉石混交です。また、その仕事は近い将来、別の人に引き継がれるのが世の常。その時に引き継ぎ先の人間や、時間を経てすっかり忘却した当時の作業者が、この備蓄された情報を時系列に追って必要な情報を拾い集めることは非常に労力を使うでしょう。また、情報ストリームをすべては追いきれない人や状況があることも考慮する必要があります。そのために、情報を定期的に「ま:まとめる」ことが大切です。日報・週報・月報の形でまとめるのも良いのですが、それらも結局時系列情報であり、時系列情報を追って当時の情報を再構成する事はそれなりに大変な作業です(ただ当時の雰囲気は味わえますけどね)。できればテーマごとに何らかの形で文書がまとまっていると望ましいです。堅い案件であればオフィス形式のファイルで作成した仕様書や作業書の形で、緩い案件であれば社内Wikiなどが候補となるでしょう。今のIT時代、全てを手書きで残す全面アナログ形式の「まとめ」は少ないかもしれませんが、アイデアベースで手書きしたホワイトボードの図や、印刷した紙資料等をファイリングしたりといったアナログ作業もおろそかにしてはいけません。昨今のインターネット用語にある「キュレーション」にも似たものがあると思いませんか。

そして最後に「ご:誤解がないように務める」。複数人で早い流れの仕事をしていると、どうしても誤解が発生するケースが出てきます。言葉の解釈の違いから、言った言わないの論争まで…。「た:確かめる」は「ゆ:言っておく」ことが相手に認識されているかの確認でありましたが、同時に誤解がないことの確認と捉えることもできるでしょう。それでも標語で繰り返しているのは、仕事に限らず広義のコミュニケーションには誤解がつきものだからです。こればかりは特定のITツールが解決してくれる問題ではなく、対面や会議での認識合わせや、日々相互理解に務めることが大切なのだと感じます。

…さて、「ゆでたまご」が言わんとしていることはこんな感じです。ブログとしてもとてつもなく長い記事にここまで付き合ってくれた方がいるとは到底思えないのですが、もしここまで読んでくださった方がいらっしゃったら本当にありがとうございます。

最後に一つ。食べ物の「ほうれん草」は大量摂取すると、それに含まれるシュウ酸によって体内に結石を発生させる要因となるらしいです。対して食べ物の「ゆで卵」は、卵のコレステロールが高いので「一日n個以上食べてはいけない」という昔話もありましたが、近年の医学や生物学では特にそういった制限は無いとされています。

あの板東英二が今も健康でいるので、「ゆでたまご」はどんどん皆さんのお仕事に取り入れていただいて問題無いと思いますよ!

b-mobile Fairのプランを1GB定額(30日)にしたらフェアじゃなくなった

2014/03/18 追記: 2014年3月現在、@nifty で契約した WiMAXを最低料金で補助回線として持ちつつ、ServersMan SIM LTE を入れたNexus 5で生活をしています。

………

こんにちは、帰省中の おがた です。

帰省中、実家にはインターネットの固定回線が無いので、ポータブルWi-Fiルータ「光ポータブル」に b-mobile Fair の SIM を入れてインターネットに接続しています。

モバイルデータ通信にも色々な選択肢がある昨今ですが、以下のような消去法で、現在は b-mobile Fair に落ち着いています。

  • ドコモのデータ通信→ランニングコストが高くて普段維持できない
  • e-mobile→実家が田舎なのでギリギリ圏内だけど、イラつくほど繋がらない
  • WiMAX→実家が田舎なので完全に圏外
  • 他の b-mobile シリーズ、U300=300Mbps、イオンSIM=100Mbps など→遅い。特にSSHやVPN等のステートフル通信では耐えられない遅さ

b-mobile はドコモのMVNOですし、手持ちのガラケードコモの電波がバリバリ入る実家で使えることはなんとなく分かっていたので最初はU300を所持して帰省したのですが、職業柄SSH無しでは生きられない自分にとっては、回線の遅さにSSHの遅さが加わって、とてもじゃないけど平穏に使える速さではありませんでした。ただEnterを押しただけでプロンプトが返ってくるまで数秒から十数秒待てますか?という話。

その後、e-caでイー・モバイル端末をレンタルして実家で使ってみましたが、本当にギリギリ圏内。よく切れる切れる。b-mobile U300 のほうがトータルでマシかと思ったほどでした(最終的には業を煮やしてU300のほうにした)。イー・モバイルにエリア改善を投稿してみましたが、その後どうなったかなぁ。

WiMAXは、帯広駅周辺以外は完全に圏外だったので、最初から諦めました。将来に期待。

というわけで b-mobile Fair に落ち着いたわけです。

b-mobile Fair は「通信のフェアなかたち。」をキャッチフレーズにしたデータ通信用SIM。要するに「定額制にすると一部の人間が調子にのってP2Pとか動画観たりとかやりたい放題するから、他のお客様に迷惑がかかる」というコンセプトで、ある種の従量制を敷いたもののようです。他の客へ迷惑がかからないというのもポイントですが、MVNOをしている通信事業者側から見た「フェア」であるなと思います。

b-mobile Fair の SIM には二種類の選べる料金体系があります。

  • 「Fair 1GB」 8,350円 → 通信量が1GBを越えるか、チャージ日から120日を経過するまで有効
  • 「1GB定額(30日)」 3,100円 → 通信量が1GBを越えるか、チャージ日から30日を経過するまで有効

通勤中に作業をするための普段使いとして Fair 1GB を契約しています。通勤中だけであれば、一ヶ月せいぜい250MBも使わないので1ヶ月あたり 8350/4=2088円 は非常にお得です。

ただ、帰省中はこれで四六時中通信をするので、一日100MB程度、多いときでは300MBほど使ってしまうようです(マイページから数時間前までの通信可能残量を確認できます)。今回の帰省中も、契約していた Fair 1GB が足りなくなってしまったので、一時的に 1GB定額(30日) に切り替えました。

まぁ、純粋な従量課金制ではありませんが、両方ともプリペイド的な従量課金制ではあります。通信すればするだけ天井無しに階段状に課金されていくことには変わりありません。「やりたい放題する人」は固定回線よりコストパフォーマンスの高い回線で金を払い続けるだけの話です。これぞフェアですね!

…というところもあり、b-mobile Fair の FAQ に「パケット通信を大量に行なった際のペナルティは設けていない」旨の記述があったので安心していたのですが、1GB定額(30日) を新たにチャージした後で来たメールにこんなことが書かれていました。

◆注意事項

・1GB定額サービスはオートチャージ専用サービスとなります。

・1GB定額サービスの有効期限終了後は、10日間のみオートチャージ設定することができます。(音声付サービスをご利用のお客様は、契約期間中はいつでもチャージを行うことができます。)

・当日を含む直近3日間の当日を含む直近3日間の通信量の合計が300万パケット(360MB相当)以上となった場合、通信の速度を制限します。

・P2Pアプリケーションなど、連続したデータ通信にはトラフィック制御を行う場合があります。

1番目と2番目はいいとして、3番目と4番目は「えー、聞いてないよ!」という話。

ちょっとこれは…と思って調べてみると、Fairと1GB定額は、同じSIMで選べるサービスであるけれど、実は全く違うサービスのようです。1GB定額SIMのほうのFAQには上記のようなことがFairとは別に書かれているのを発見しました

しかしまぁ、3日間360MB(1日120MB)って、固定回線の普段使い感覚で使えば、すぐに到達する額です。そのための 1GB定額(30日) じゃないの?と少し文句を言いたくなる気持ちをグッと抑えました。

また、4番目も私にとっては問題でした。「P2P」という言葉にネガティブな側面もあるけれど、私は普段大量通信をするP2Pアプリケーションを使わないので当初問題ないと思ったのですが、ここでいう「連続したデータ通信」ってステートフル通信全般を指すんじゃないか。つまり、私の生命線であるSSH等も当然入るだろうなと。普段はSSH圧縮をオンにした上で自宅のプロキシサーバを使ってウェブ閲覧をしているのですが、言われてみれば帰省当日よりも今のほうが通信が遅くなった気もします(あくまで気がするレベルです)。

「やりたい放題する人」を実質的な従量課金制にしてフェアになったとb-mobile側は自負していると思うのです。まぁ、1GB定額(30日) のほうはフェアじゃなくて「俺たち通信事業者が3100円/30日で出血大サービスをした商品だ」「ドコモの回線をMVNOしていて3100円/30日は苦しいんだ」という言い分も分からなくは無いです。ただ、悪い事をするわけでもない、実質的な従量課金を受け入れている私のような客に対して、これほどまでに些細な量や質の通信に制限をかけるのもどうなのかなぁ、って少しどころじゃなく疑問に思ったので書いてみた次第です。b-mobile Fair を 1GB定額(30日) にしたら、こっちにとってフェアじゃなくなった、ってちょっと笑い話じゃあないなぁと…。詳しく調べていないのですが、ドコモ本体等の他の通信事業者のほうが、価格的に1ヶ月あたりの料金はFairより安価で、かつこういう縛りはないのではないでしょうか(他の縛りはありそうですが)。改めて東京に戻った時にでも競合製品を調べてみようと思いました。

とはいえまぁ、通勤中にだけちょこっと使う、緊急時の作業のための回線、といった側面で見れば、期間契約縛りがない(好きな時にやめられる、これ結構重要)「b-mobile Fair / 1GB定額(30日)」は有力な選択肢であり、これからも東京で自宅と会社に固定回線がある環境では当分の間使い続けるサービスとなりそうです。

まぁ、こんな話は、実家にインターネットの固定回線を引けば良いだけの話。一昨年の引っ越し前は安価なADSLとISPを契約していたのですが、引っ越し後の地域は光化区域のようで、安価なADSLを引くことができないとのことでした。うちの母親はそんなにインターネットを使う人間ではないので、ほとんどの間自分が居ない場所に維持費の高い光回線を引くのは現状見合わないかなと感じて、今も固定回線については悩み中であります。次の帰省の時までにどうするか、いろいろ考えようと思います。

2012年、あけましておめでとうございます

2012年、あけましておめでとうございます。

TwitterやFacebookでは新年のあいさつをしていたのですが、ブログではまだでした。これを書いている現在、既に元旦を過ぎて1月2日になってしまいました。今年はブログのほうも活発に書いていきたいと思い、年始のご挨拶を兼ねつつ、2012年の抱負を語ったりしようと思います。

2011年をじっくり振り返ろうと、IRCのログ(会社やコミュニティのチャンネルや、メモ用の自分専用チャンネルなど)、Twitterの投稿履歴、やり取りしたメール、iPhoneで撮った写真…;などなどを眺めていましたが、それなりの分量があって全然時間軸が進みません。実家にはインターネットの固定回線も無く、手持ちのb-mobile Fairの細い回線なので振り返りも捗らずでした。2011年をじっくり振り返るのは、東京に戻ってからの最初の三連休にでもしようと思います。

THE INTERVIEWSへ2011年の年末に投稿した記事「今年やり残したこととかありますか?」とも被りますが、2011年を軽く振り返りつつ、2012年の目標や展望を語ってみたいと思います。

2011年は出会いに恵まれた年でした。

2010年の秋のYAPC::Asia Tokyo 2010で、「スカイアークシステム」(以下「スカイアーク」)という会社を改めて知って(それ以前から帯広にあるIT企業として名前は知っていました)、帯広から技術コミュニティ・Perlコミュニティを積極的に盛り上げようとする会社があるんだ、という興味から「スカイアークの人と会ってみたい」と周囲に吹聴していたら、とある方に2011年5月のゴールデンウィーク帰省の時にスカイアークの帯広本社に連れて行っていただきました。そこでHokkaido.pm主催者の@onagataniさんと出会って「Hokkaido.pmで発表してみない?」と勧誘を受けて、7月に札幌で行われたHokkaido.pm#5でHokkaido.pm初参加+人生初トーク「mod_perl温故知新」をさせていただきました(ブログ記事)。30代前半にもなって人生初トークとなったわけですが、トーク体験は貴重な経験となりました。さすがに直近10月に行われたYAPC::Asia Tokyo 2011では純粋に聴衆側にまわりましたが、7月の人生初トークを弾みとして、12月のHokkaido.pm#6でもトーク「mod_perl hacks PHP」をさせていただきました(ブログ記事)。Hokkaido.pm#5でのトークが自信になって、2011年9月帰省時についでに参加したLDD’11/Fall in KUSHIROでも初のLT5分間トーク「文字化け2011」をさせていただきました。

そもそも「会ってみたい」と吹聴していたら会わせてくれるという人とのつながりもありがたいことです。7月と12月のHokkaido.pmで北海道や関東で活躍しているPerlハッカーの皆さんと出会えたり、そこを軸として毎年参加しているYAPC::Asiaでも今年はHokkaido.pmの方々をはじめ例年にないほど多くの方とコミュニケーションさせていただきました。Hokkaido.pmではトーク側にまわったことによって、向こうから声をかけてくださる方や激励してくださる方がいたことも大きな自信につながりました。7月に改めて「人とのつながり」の大切さを痛感したことは2011年の大きな収穫でした。

それ以外の、世の中の動きも含めた2011年は、後ほどのブログ記事で振り返る予定です。2011年は3月の東日本大震災を初めとした激動の年でしたね。

2012年はもっと「オープン」に活動していきたい、そう感じます。いや、2012年のキーワードは「オープン」と言い切りましょう。

「オープン」という言葉には「個人や会社でまだパブリックに披露できていない技術をどんどん公開していく」という意味と「新しいコミュニティ活動やウェブサイト、ソフトウェア等を新規開設していく」という二つの意味を持たせています。

2011年は7月のトークで(会社の了承を得て)会社での試みを披露したところ、それなりの評判を頂きました。これは個人としてのスキルアップや自信にもつながりましたが、同時に会社のイメージアップにもつながったと思います。以前までは引っ込み思案だったりシャイだったり、有名になると何か悪いことをされるんじゃないかという思考が先行して、表舞台に出ることに消極的でしたが、これからは自分のため会社のため、コミュニティやお世話になったオープンソースソフトウェアへの恩返しのため、差し支えない範囲で自分の手の内をどんどん公私の活動をオープンにしていこうと考えています。そのために今年2012年は昨年以上にTwitterやブログや各種SNS等を積極的に活用していくことになるでしょう。

トークをする側にまわることは刺激的でスキルアップやイメージアップにつながりますが、それにはトークをするネタも必要です。自分のスキルアップというものは人生を通した課題でもあります。そして手元には「あんなこと、こんなこと、できないかな」と考えている未着手の問題も些細なものから大規模なものまであまねく存在しています。こんなサイトがあればいいのに無い、といったこともしばしば。「必要は発明の母」でもあります。特にトークのためにネタを捻出する必要なんて実は無くて、世の中には解決すべき問題がたくさん残されています。それを解決したことをトークのネタにまわせばいいだけです。その過程の中で必然的に、新しいコミュニティ活動やウェブサイトやソフトウェアを積極的に作っていくことが必要となるでしょう。意識的に行うとなると時間と労力が当然必要になりますが、自分のスキルアップを始めとしたポジティブな効果を2012年はより一層上げていきたいと考えています。

それ以外にも「今年やり残したこととかありますか?」で触れた

  • もっと人とのつながりを持つこと
  • 多くの人の役に立つ有用なツールを世の中に出していくこと

も2012年の目標として掲げたいと思います。これも前述の話や「オープン」の一環ですね。

「オープン」という言葉から連想されるキーワードで真っ先に思いつくのは「オープンソースソフトウェア」(OSS)ですが、学生時代から社会人の今まで、各種OSSには本当にお世話になってきました。今まではお世話になってきただけですが、こんなことを言うのはおこがましいと思いつつも、2012年は微力ながらOSSに恩返しや貢献ができるように活動していきたいと思います。

私だけでなく、私にかかわるすべての人にとって、2012年が飛躍の年でありますように、邁進していく所存です。