日別アーカイブ: 2014年4月15日

WWW::PushoverをCPANで公開しました

おがた (@xtetsuji / PAUSE: OGATA) です。

WWW::Pushover というモジュールを CPAN で公開しました。2014年4月15日現在のバージョンは、初期バージョンの0.01です。Mac OS X のクリップボード監視モジュールAnyEvent::Mac::Pasteboard以降、久々にCPANにモジュールをアップロードしました。

これはPushoverという海外のスマートフォン向けプッシュ通知サービスへのインターフェースです。もともとWebService::Pushoverというモジュールがあったのですが、重量級のモジュールをいくつも使っていたのと、PushoverにあるAPIでサポートしていないAPIが一部あったので、Perl5.14以降のコアモジュールだけで事足りるようなものを作りたくて、ずいぶん以前に作ったものをアップロードした次第です。

今回は Minilla の minil コマンドでひな形を作って作業していたのですが、念のためと FAKE_RELEASE=1 minil release をした後からおかしな状況になってしまい、結局 minil build したものを PAUSE の管理画面からアップロードするなど、混乱してしまいました。そのせいか、2014年4月15日時点でsearch.cpan.org/~ogata/metacpan.org/author/OGATA の一覧に WWW::Pushover が出てこないとか色々あってどうしたものかなと思ってはいるのですが、ひとまず cpanm WWW::Pushover と打つことでインストールはできるようです。このあたりは、次にPerlの勉強会に行った時にでもCPAN Authorの方に質問してみようかと思っています。頼れる人がいるの大事。

CPANにアップロードしたいものの色々な理由で踏ん切りがつかずGitHub止まりになっているモジュールはいくつもあるのですが、今後多くの人に有用なものは少しずつCPANにアップロードしていきたいと考えています。まだまだCPANへのアップロードは不慣れな点が多いのは、場数を踏んで解消していきたいところです。

英語ですが、ドキュメントにも書いてある通りいくつかの注意点があります。

  • Pushoverのスマートフォンアプリは、買い切りの有料アプリ
  • WWW::Pushoverを使うためには現状ログインをして自分専用の「アプリ」を作ってAPIキーを発行する必要がある

後者に関しては利用者の利便性のためにAPIキーを同梱しようか結構悩んだのですが、現時点では同梱していません。そのあたりはドキュメントにも書いてある通りです。

「日本だとImKayacがあるだろう」という意見もあるのですが、さすが有料のPushoverは高機能で、例えば以下の点がImKayacより優れているポイントでしょう。

  • Pushoverは通知のサウンドを選べる
  • Pushoverは通知の優先度を選べる
  • PushoverにはiOS版だけでなくAndroid版もあるし、iPadにもユニバーサルアプリ対応している
  • …その他色々

ImKayacは無料です(有料版もあります)が、ちょっと通知ごとにサウンドを替えてみようかなとか、AndroidユーザでImKayacを使えなかったユーザへの、もう一つの選択肢になるのではないでしょうか。

ちなみにAndroidには他にもプッシュ通知系アプリもあってAPI公開されているものもあるので、そのAPIラッパーも暇があったら書いてみたいと思っています。

Foursquareの本質とは何なのか

Foursquare大好き、ロケーションベースサービス大好きな おがた (@xtetsuji) です。

ここ最近、私の周囲ではGoogleからリリースされたAndroidアプリ「Ingress」が少しずつブームになってきています。いわゆる位置情報が取れるようになってから定期的に出てきた「陣取りゲーム」のようなものなのですが、グラフィックの秀逸さなどから、一部に熱狂的なファンを生み出しつつあるようです。 そんな中、「IngressはFoursquareより面白い」といった声も聞かれるようになりました。ただ、なんだか違和感を感じます。「Ingressってゲームだよな。FoursquareってIngressと比較されるようなゲームだったっけ?」と。

Foursquareは今や世界でも有数の位置情報のビッグデータを持った企業でありサービスです。FoursquareユーザがFoursquareでチェックインし続ける目的はそれぞれあるでしょう。そんなことを考察していき、私が考えるFoursquareの本質と、今後の展望について文章の形で考えてみることにしました。

とりとめもない長文になってしまったので、最初に結論を書きます。あとは興味と時間のある人だけ読んでいただければ満足です。また、太字だけを流し読みしていただいても嬉しいです。

結論としては

長文を読むのが面倒(いわゆる tl;dr)という人向けに結論だけ書いておきます。

  • 私が考える上でFoursquareの本質はゲームではない。新規ユーザを取り込むためにバッジといった「ゲーミフィケーション」を設けているのは呼びこみの一つに過ぎない。バッジ目的でFoursquareをしても、早晩頭打ちになる。
  • Foursquareは位置情報のビックデータを持つ有数の企業になった。今後はこの情報を使って、O2Oを仕掛けてくる。また、位置情報を欲する企業や団体と連携して音頭をとって収益モデルを築いていく。
  • ユーザがFoursquareを使う大きなメリットの一つは、ライフログであり、それは個人のビッグデータである。また、Foursquareが仕掛けてきつつあるO2Oの情報を使うことで、いわゆる食べログよりももっと汎用的なべニューランキングツールとしてユーザにメリットをもたらす。
  • 実際に興味のある人は、熱心なFoursquareユーザ(4sqer)と顔を合わせて語ると良い。4月16日のFoursquareの日に、全世界で4sqDay Meetupが行われる。2014年も東京でも行われる予定。私も行く予定です。

Foursquareはゲームではない

Foursquare自体、仕組みとして「バッジ」などといったコレクション要素のあるゲーミフィケーションの仕掛けを用意していますが、Foursquareの本質はここにはないと思います。 バッジを集めるためにわざわざ外出するという動機付けのもとに頑張っている人もいることは確かですが、多くの人はそうではないでしょう。後述の「位置ゲー」企業の中の一部は、自治体などとタイアップして観光誘導などで成功している例もありますが、Foursquareはそういうことを直近では行わないと思います。不正チェックインは論外です。

そうなると普段の生活圏内でチェックインをしてどれだけバッジが収集できるかといった話になるわけですが、一通り数十種類のバッジが集まったら、あとはほとんど手に入らなくなってしまうでしょう。 またメイヤーについてもゲーミフィケーション的要素ですが、これは「ユーザの中でも最も常連である」的意味合いしかなく、奪い合うものではないと思います。これも普段の生活圏内でチェックインしている限りは、それほど増えるものではありません。

要するにバッジやメイヤーといったゲーミフィケーション要素は、Foursquareの本質ではないと私は考えています。 もちろん、Foursquareユーザの中には様々な場所に足げく通い、バッジやメイヤーの収集に楽しみを覚えている人もいます。当然ながら、楽しみ方や活用方法は人それぞれではありますが、それがFoursquareユーザの大多数かと言われると私は否定的な方です。

位置情報とその実用と遊びの前史

いわゆるガラケー、ドコモなどでは基地局によるキロ単位の位置情報が取れる機能がありました(オープンiエリアなど)。その頃から、地図などを表示するという実用アプリが徐々に出てき始めました。まだ、精度的にもゲームに利用するには早い時期でした。 その後、多くのガラケーがGPS機能を搭載して、地図アプリなどが高機能化します。ガラケーにもGoogleマップといったPCでお馴染みの「実用アプリ」がガラケー向けにブラッシュアップして登場します。 そのなかでGPSの位置情報が、「実用」と対比される「遊び」(=非実用)に利用される事例が現れ始めました。スマートフォンの前の時代は、世界的には日本のケータイ(ガラケー)が性能的にも最高峰の携帯電話でした。この点でも日本が先行していたと言えるでしょう。特に「位置ゲー」という登録商標をひっさげて市場に切りこんできたコロプラはよく知られた企業です。このころ、コロプラという企業の前身である「コロニーな生活」が作られた頃から、企業や個人が多くの位置情報を活用したゲームを公開します。 しばらくは日本のガラケーによる位置情報を活用したゲームが先進していました。

その状況を塗り替えることになるのがスマートフォン、特にiPhoneの登場です。このころから、Foursquareのような位置情報サービス・ロケーションベースサービスと呼ばれる毛色の違うものが登場するのですが、その詳細は後述します。

Foursquareに至るまでのロケーションベースサービスの歴史、そしてGoogleの戦略

スマートフォンが登場する前後に、アメリカで「Dodgeball」というサービスが生まれました。これは実は今のFoursquareを作った人達によって作られた位置情報サービス・ロケーションベースサービスなのですが、ほどなくしてGoogleに買収されてしまい、そしてサービスが終了してしまいます。

Googleはというと、買収したDodgeballを無駄にしたというよりも、そのノウハウなどを利用して新しいものを作ったと想像しています。それが記憶にある人もいるだろう「Google Latitude」です。これはスマートフォンの位置情報を送信し続け、仲間達の間で位置情報を共有しあうというサービスだったのですが、セキュリティ上の懸念が優先してしまい、いまいち流行らず、そして数年ののち終了してしまいました。

Dodgeballを作った人達は、GoogleにDodgeballを売却した後、新しいロケーションベースサービスを作ります。それが今のFoursquareです。ちょうど高機能なスマートフォンが出てきた時代であったり、Gooogleにサービスを売却した人達が再度類似サービスを作ったという状況などが話題となり、Foursquareは一気に有名になっていきます。

当初は、日本も世界もスマートフォンをゲームに活用しようという機運が非常に高く、その括りでFoursquareも位置情報ゲームとし捉えられることが多かったように思います。ちょうど日本でのガラケー時代からのコロプラ勢などの影響もあるでしょう。ただ、当時のFoursquareの経営陣はゲーミフィケーション的要素はユーザ獲得の入口に過ぎないとしていたのだと思います。当時のFoursquareは収益モデルも確立しておらず、多くの人が先行きを不安視したりしましたが、現在は位置情報のビッグデータを持つ有数の企業として、対企業向けにそれを元に商売をしていることは知る人ぞ知るFoursquareの顔です。

ここで話を戻して、Googleはせっかく買収したDodgeballを閉鎖し、その後のLatitudeもサービス終了して、位置情報サービスの負け組となったのかというと、そうでもないようです。ユーザ数ではTwitterやFacebookに大きく水を開けられているGoogle+ではGoogleマップと連携したチェックインの概念を持ち込み、最新のAndroid端末のウリとなっている「Google Now」でLatitudeのような機能を持ち込み、そこそこの好評を得ています。また、冒頭に出てきた「Ingress」などにも経験が生きているのかもしれません。

Googleくらいの大きな企業ともなると、位置情報への投資と失敗は些細な出費なのでしょう。Googleがここまで失敗を繰り返してもロケーションベースサービスに興味をもったのは、一つはソーシャルメディアへの強いあこがれと、もう一つは自社のメインサービスとなったGoogleマップやGoogle Earthの進化といった理由があるのではないかと私は見ています。

FoursquareとGoogleは仲が良いかと言われると、そうでは無いように見えるところが面白いです。Googleマップの企業向けの利用料が格段に上がったときにいち早くGoogleマップの使用をやめた企業の一つがFoursquareです。FoursquareはOpenStreetMapを使う選択をしました。Foursquare自身も自分たちが作ったサービスを潰されて、しかもFoursquareの対抗サービスを定期的に出してくるGoogleに、あまり良い気分をしなかったことは大いに想像できるところです。

またFoursquareはGoogleのライバルとも言えるAppleとの接触を何度か図っています。記憶に新しいところでは、新しいiOSで採用されて大不評となったAppleマップのデータ改善にFoursquareが情報提供をしたという報道。これが事実であるかは不明ではありますが、FoursquareはどちらかというとGoogleよりもAppleに寄っているという見方は正しいのではないかと思います。

GoogleとFoursquareという軸で話をしてきましたが、私の想像なども入っているので、全て事実であるという保証は無いところはご注意ください。また、日本語のWikipediaの以下の記事を参考にさせていただきました。

今もFoursquareに熱心なユーザは何を目的に使っているのか

どの無料サービスにも言えることですが、サービスを何年も継続していると、登録はしたものの使わなくなったユーザと熱心に使い続けるユーザの二通りに分かれるのは常といえます。

では今もFoursquareをしているユーザのモチベーションとはなんなんでしょうか。

少なくともゲーミフィケーション要素は、何年もFoursquareを続けていくと薄れてきます。バッジも取れなくなるし、メイヤーも取れなくなる。

ユーザの目的の一つは「同報通信」的目的があるでしょう。Twitterの「○○なう」の代わりにFoursquareを使う人です。私もそれを実践して、カフェにいたら私に会いたい後輩がやってきたという出会いがありました。位置情報を公開する事のリスクばかりが取り沙汰されますが、一定のプライバシールールを意識することで、有用な出会いのツールになるのではないかと思います。

もう一つ、これが重要なのですが、ライフログ的使い方があります。FoursquareはiCalなどのフィードもしていて、いつどこに行ったのかという情報を後から振り返る機能をいくつも提供しています。GoogleカレンダーにiCalファイルを登録すると、何年も前のチェックイン情報を振り返ることができます。これが数年分たまると、とても興味深い自分のライフログ・個人版ビッグデータとなるのです。

今後のFoursquareはどこに向かうのか

Foursquareの本質が、少なくとも多くの人にとってゲームではないことは前述した通りです。

ではFoursquareの本質は何なんでしょうか。いったいFoursquareは今後どういった方向に向かうのでしょうか。

一つは位置情報のビッグデータを使って対企業に商売をするという方向性があります。これは純粋に位置情報が欲しい企業への情報提供というものでしょう。あまり一般ユーザには関係ない話かもしれませんが、AppleマップやOpenStreetMapが改善するかもしれないことを考えると、我々に無関係な話でもなさそうです。

また、日本でいうところの「食べログ」的な情報発信源になろうという目論見も垣間見えます。つまり、いまどきの言葉で説明すればO2O事業への参入です。既にFoursquareは、飲食店などのビジネスパートナー向けのアプリケーションをリリースしています。今後、日本での活動が活発化した際には、この分野での攻めもあることでしょう。以前からアメリカでは「Yelp」と競合すると言われてきました。2014年春、ついに日本にもYelpが遅れて上陸したわけで、Foursquareの動向には注目が集まります。Foursquareの経営陣は「世界で一番多いチェックインは新宿駅」などといった、日本を注目しているといった発言もたびたびしており、日本でのFoursquareの本格的な活動が楽しみであるというのが、Foursquareの一ファンである私の意見です。

飲食店に限らず、全世界の全ての場所「ベニュー」を包括的にレーティングし、それを一時発信元として発信できるのは、Foursquareなど一部の限られた企業だけでしょう。また、一連のステマ騒動や星3つ収斂問題を抱えている食べログの牙城が誰によって切り崩されるのかといった興味もあります。それはYelpかもしれないし、Foursquareかもしれません。外来のO2Oプレイヤーの活動から今後も目が離せません。

Foursquareのユーザと交流することでFoursquareの色々な面が見えてくる

既に周囲でFoursquareをやっているユーザがいないけど、なんとなく好きだからやっているというユーザは、FoursquareのMeetupなどに参加してみるとよいでしょう。

4月16日は4の2乗(square)が16であることから「Foursquareの日」とされており、その日に全世界でMeetupイベントが行われます。今年2014年も東京でイベントが行われます。

私も2012年に参加して、様々な目的でFoursquareをプレイする人達の様々な意見を聴き、非常に興味の持てる、幅の広いサービスだという印象を持ち、さらにFoursquareが好きになりました。

もしFoursquareに漠然とした興味はあるけど、その本質が何か分からないという人は、FoursquareのMeetupに顔を出すなどして、実際にFoursquareのコアユーザと話をしてみることで新たな視点が得られることは間違いないでしょう。初心者から開発者まで、様々な人達が集まった過去の4sqDay Meetupでしたが、みなさん非常に楽しんでいました。

上述の、2014年東京のFoursquare Meetupには私も参加します。後日レポートを書く予定ではいますので、もし興味があるけど出られないという方は、楽しみに待っていてくださると嬉しいです。

過去の4sqDay Meetupのまとめなどを引用して、この文章を締めくくりたいと思います。

皆さんのFoursquareライフが充実したものになることを願っています。