こんにちは、食べ物でも「ゆでたまご」が好きな おがた です。
以前、「ホウレンソウ」が嫌いとTwitterに投稿をしました。
[tweet https://twitter.com/xtetsuji/status/159143577241399296]
正直、投稿するとき「社会人の基本をないがしろにしやがって」とか批判されるんじゃないかと内心ビクビクしていましたが、TwitterでもFacebookでも好意的な意見ばかりで安心しました。
その後に、フォローの意味を込めてこんな投稿をしました。
[tweet https://twitter.com/xtetsuji/status/159146287428677632]
画像からも分かる通り、2009年3月に私自身が考え出したもの。
Twitterでは余白が少なくて語れなかったことですが、なぜ「ホウレンソウ」ではなく「ゆでたまご」なのか。これは書きたいと思っていたことなので、このブログに書いておこうと思います。
なお、以下はあくまで個人的な感想です。真っ向から「ホウレンソウ」という言葉を滅ぼしてやろうとか、そういうことは思っていません。批判や改善点は好意的に受け入れいますが、どうか若造の戯言だと思って優しく読んでやってください。
「ホウレンソウ」のダメなところ
非常に個人的な感情かもしれませんが、「ホウレンソウ」という言葉はお偉い上層部の人達が下々の部下から楽して情報を引き出すという文脈で使い古されていることが最もダメだと思う点でしょうか。
よく考えてみると、部下が上司に対して「〇〇(上司の名前)さんは「ホウレンソウ」がなってないよなぁ」という文脈で「ホウレンソウ」という言葉が使われることって無いですよね。これが「下から上へ楽して」を体よく表現した「ホウレンソウ」の真実。でも、実際にマネジメント能力が欠如した上司や、すぐに仕事を抱え込んで部下に秘密を作ってしまう上司というものが確実にいて、部下に情報を下ろしてくれないという事態は意外と存在します。当然ながら、会社という組織をまわすためには上司が部下に対しても情報を提供する義務はあるわけです。「ホウレンソウ」という言葉は、生ぬるい文脈で使われ続けてしまい、そういうことすら言及できていない。既に腐っている。そう思えるわけです。
次に、これには反論も多いかと思いますが、「報告」と「連絡」の違いが曖昧、それを明確にしたところで「報告」も「連絡」も今のITの世の中では使うツールの違いでしかない、という点。
確かNHKの「会社の星」という番組でしょうか。20代の若い新入社員に社会人のイロハを教える番組。そこで「ホウレンソウ」の特集が組まれていた回があって観ていたのですが、そこに出てきた営業のお偉いさんらしき人が本気で最低でした。ここでは「営業部長」と呼ぶことにしましょう。
その営業部長は常に国内や海外を飛び回っているらしく、会社にいることは本当に稀。で、会社に帰ってくると、たくさんの部下がその営業部長に「ホウレンソウ」をしに行くという絵面でした。それだけなら忙しくて儲かっていそうな会社だなぁ程度の感想でしかないのですが、問題なのはその営業部長の偉そうなこと偉そうなこと。部下の報告がダメだと一蹴すること一度や二度ではない。部下のインタビューを聞いても、ある種神格化されて恐れられているんだなと思わせる印象。そのために、その営業部長が帰ってくる前から、部下たちはいかに手短に的確に報告ができるか、必死に時間をかけて資料作りをしているという絵面だった記憶があります。
何が問題か。
- 「ホウレンソウ」以前に、この営業部長は直属の部下が明らかに多すぎです。だって、自分が「ホウレンソウ」を「受信可能な時間」に明らかに部下のそれをさばききれていないんですから。比較的大規模な会社だったと絵から見受けられましたが、それを改善出来ていないことには組織的な問題が見え隠れします。「会社にいる時間を適度に短くすれば自分の神格化がされて既得利権を得られるからそうしている」と思われても仕方がないです。
- 部下が「ホウレンソウ」の資料作りをする時間が無駄です。部下たちは営業部長を恐れているので、報告事項は相当時間を掛けて練りこんでいるようです。もう一度言います。時間の無駄です。
- 無駄に叱りつけたり怒ったり無下に一蹴したりすることで、部下の相談意欲をそぎます。この手のタイプの人は、時々飲み会を催したりして「飴と鞭」を使い分けて人心掌握をする傾向にありますが、それでも私はこんな上司に積極的に相談したくありません。
- なぜこの営業部長は、会社に居ない時間に部下の「ホウレンソウ」を受信しないのでしょうか。まぁ、緊急の場合は電話くらいは使える脳みそはあるのでしょうが、移動中は常に忙しいのでしょうか。そんなことはないでしょう。部下から、メールでもいいしIMでもいいし、もっと良いのはCMSの類でも導入して、随時部下からの「ホウレンソウ」を聴くことです。長い報告を体裁をまとめて…では、部下の時間が無駄です。そこには「まとめ方が悪い」「時間がないんだ手短に話せ」という新たな怒りの種も生まれてくることでしょう。それとも単に部下に怒り散らしたいだけなんじゃないでしょうかとすら思えてくる。随時どこに居ようとも、本当にリアルタイムに一行「△△を現在進行中」「□□で行き詰まっている」というストリームが各部下から飛んでくるような仕組みを作ったほうが、その「単なる一行の事実」には無駄に怒る要素が入ることも少ないだろうし(怒ることで神格化や既得利権を進めようとしているのなら別ですが)、部下の時間も確実に節約できます。その「情報の洪水」を捌けないのだとしたら、IT時代の落伍者です。さようなら。
こう並べてみると、IT社会の現在での「ホウレンソウ」特に「報告」と「連絡」はツールの使い方をどうするか、なのだと思います。
報告?簡単に言えばメールを使えばいいですよね。メールが重いと思うならIM、さらにいいのは社内Twitter(Yammerとか)のようなものやIRCがあるといい。私の知らないもっと良いツールがあるかもしれない。連絡だって、グループウェアの選択肢は相当あるし、Google Appsなら無料で使える時代。持っているケータイがガラケーやらくらくホンでも、外から会社のメールをセキュア見るサービスがある時代なんですよ!それくらい金をかけて何とかしなさいと言いたい。そうでなきゃ、組織を変えて部下を減らして、もっと対面で部下と「ホウレンソウ」が出来る環境を構築すべきです。
こう俯瞰していくと、本当に悪く言ってしまえば、「ホウレンソウ」という概念は老害が若造を叩くためのバズワードに成り下がっていると思わざるを得ません。
「報告」と「連絡」は対面で話せないのであればITツールの使い方に移譲できると話を持って行きましたが、心情面が重要な「相談」はツールだけでは解決できないものでしょうね。そもそも「相談」を聴かない上司(最悪「俺そんなこと知らないし」と真顔で他人台詞を吐く上司は世の中にいる)をどうするか「ホウレンソウ」は回答を示してくれません。だって、「ホウレンソウ」は「おかみ」のためのバズワードなのですから。ただ、あまりにも普段から怒り散らしていたり他人事のようにしていたら、相談意欲がそがれるのは明らかです。もちろん、部下の失態にも怒る要素があることはままありますが、これは前述のように「報告」「連絡」を綿密に行う(行ってもらう)ことで多少は解決できることではないでしょうか。
勘違いしないで欲しいのは、「部下を甘やかせ」と言っているわけではないのです。ただ、わざわざ自分の怒りを増長するような貧相な「ホウレン環境」の中で無駄に怒るのは損だと言っているだけです。自戒の意味を込めて言うことですが、仕事云々関係なく怒るということは損です。私も(万年平社員なので部下を持ったことは今まで一度も無いものの)ダメな後輩を叱った事はありますが、それは最終手段でしたし、後輩が至らない部分は最後まで優しく導いたつもりです。そうしないと、常日頃から怒り散らしている人に積極的に相談したいと思う人なんて、そうそう居ないでしょう。
ここまでのまとめ
- 報告:対面で話そう。対面で話せる時間が無いのであればIT技術を使って何とかしよう。
- 連絡:グループウェアを使おう。
- 相談:怒ることは損。相談を遠ざけるどころか人望すらを下げる。
「ホウレンソウ」にはカバーできない領域があることが見えてきました。
「ゆでたまご」の登場
色々な体験の中で「ホウレンソウ」は使えないなと思ったわけですが、何かを否定するのであれば代替案をあげなければならないのは世の常だと思うのです。そこで「ホウレンソウ」に足りないものはなんなのか考えました。また「ホウレンソウ」と同様に、標語っぽく頭文字を並べて食べ物の名前として覚えられるものがいいなと思って思索を巡らせていたら、手元にあったのがコンビニで買ってきた「ゆでたまご」でした。
「報告も連絡も何らかの社内情報ストリームで言い放っておくでいいよなぁ」とか、「言い放った大量の言葉を検索する仕組みはITに譲るとしても、どこかでまとめないと、上司でもないけど後でその仕事を引き継いだ人が情報を得る時に困るよなぁ」とか、語呂合わせのために信頼している上司に仕事をする上で何が大切かヒアリングしたりしながら、ひとつの標語が完成しました。それが「ゆでたまご」です。
- ゆ:言っておく
- で:できなくても (報告などをしたり言っておく)
- た:確かめる
- ま:まとめる
- ご:誤解がないように務める
この「ゆでたまご」は誰が誰に対しても心がけるべきこととして打ち立てました。なので、私のような万年平社員が上司に「ゆでたまご」をすることは当然として、上司も部下に対して「ゆでたまご」をして欲しい。そういう願いを込めました。作った私が「悪い文脈」で使うことをよしとしていないのでまだ腐ったりはしていないと自負していますが、そもそも今回Twitterで発言するまでは、社内どころか私の机を良く見る隣の上司くらいしか存在を知らない標語でしたから、現在進行形で新鮮です。
まずは「ゆ:言っておく」。最初から少し語呂合わせが強引ですが、ホウレンソウで言及されていた「報告」も「連絡」も、カナメはこれです。特に「声を出して言葉を出せ」というわけではなく「迅速に伝えろ」という意味合いを持たせています。うちの会社には社内IRC環境がありますが、私は日頃「◯◯開始しました」「◯◯終了しました」「〇〇簡単だった」「〇〇手ごわい」という発言をそこでバンバンしています(最近では私くらいしかしないのが寂しいのですが…)。上司はそれを見ていて、私が何をしているのかリアルタイムに把握できる。ひたすら事実を述べる短文をとにかく迅速に伝えることが大切です。この変化が激しい世の中、余程忙しいとかでない限り、これくらいの情報ストリームは出来る限り受け取って欲しいし受け取りたい。これを実現するツールにメールは少々「重い」ですが、物理的に同じ空間にいる場合には本当に声を出してこまめに伝えたりすることでITツールを使わなくても実現可能なことでしょう。ITツールで言えば、IMや、社内Twitter(Yammerとか)的なもの、おすすめなのはIRCがこれを実現させてくれるツールではないでしょうか。ITツールを使えば物理的距離が離れていても情報共有ができる(ツールにもよりますが)ことがメリットです。そして、アナログの対面対話であってもデジタルツールであっても逐一記録を残すことは重要です。メモを取るなり機械的にログを取るなりしておくべきです。これの実践によって膨大な情報ストリームが蓄積され一種の共有知が出来上がることを考えると、デジタルツールでのログ収拾を前提として、さらにそれに対して機械検索が出来るとなお良いでしょう。
そして「で:できなくても」。ホウレンソウは「報告」の重要性を説いていますが、特に組織が大きくなると都合の良いことしか報告をしないという人が必ず現れるようです。本当に大切な「報告」は、必要なこと全てを正しく報告すること。ホウレンソウはこれの曲解に言及していません。実際、昔某社でコテコテの大阪弁を発して開発の人間を恫喝してまわっていた営業部署で一番偉く海外の子会社のトップにまで登りつめたとある役員は、当時の社長に対して良いことのみ報告して、悪いことはひたすら隠し続けたそうです。ほどなくして、その周辺事業は徹底的に瓦解してその会社全体が傾くことになるのですが、これは「悪いこと」「できなかったこと」をひたすら隠して良いことだけを報告し続けた末路です。「で:できなくても」はできなかったこと等の悪いことも含めて必要なことは打ち明けようという「報告」であり「相談」でもあります。悪いことを溜め込んでしまうと打ち明けづらくなりますが、前述の「ゆ:言っておく」の迅速さとこまめさで言いやすくする狙いもあります。
ここまでは「伝える」ことに重点を置いてきましたが、次は「た:確かめる」です。「ゆ:言っておく」があまりに素早いと、いくらその情報ストリームを観察している人が卓越した情報処理能力を持っていても、忙しい等の理由で見逃すことがあるでしょう。私も大量の情報ストリームを漏れ無く把握する自信はありません。ある程度以上重要なことは本当に相手に伝わっているか確かめることは必要でしょう。また、自分が依頼されて作業していることや他の人に依頼した作業が間違った方向に進んでいないかも定期的に確かめることは大切です。「相談」はホウレンソウの実践者が問題意識を持ったときに初めて発生するフックのように語られることが多いように思えますが、「た:確かめる」はその点を定期的にレビューしようという意味合いも込めています。
こうして「ゆ:言っておく」から始まる活動で大量の情報ストリームが生成されるわけですが、その蓄積された情報は玉石混交です。また、その仕事は近い将来、別の人に引き継がれるのが世の常。その時に引き継ぎ先の人間や、時間を経てすっかり忘却した当時の作業者が、この備蓄された情報を時系列に追って必要な情報を拾い集めることは非常に労力を使うでしょう。また、情報ストリームをすべては追いきれない人や状況があることも考慮する必要があります。そのために、情報を定期的に「ま:まとめる」ことが大切です。日報・週報・月報の形でまとめるのも良いのですが、それらも結局時系列情報であり、時系列情報を追って当時の情報を再構成する事はそれなりに大変な作業です(ただ当時の雰囲気は味わえますけどね)。できればテーマごとに何らかの形で文書がまとまっていると望ましいです。堅い案件であればオフィス形式のファイルで作成した仕様書や作業書の形で、緩い案件であれば社内Wikiなどが候補となるでしょう。今のIT時代、全てを手書きで残す全面アナログ形式の「まとめ」は少ないかもしれませんが、アイデアベースで手書きしたホワイトボードの図や、印刷した紙資料等をファイリングしたりといったアナログ作業もおろそかにしてはいけません。昨今のインターネット用語にある「キュレーション」にも似たものがあると思いませんか。
そして最後に「ご:誤解がないように務める」。複数人で早い流れの仕事をしていると、どうしても誤解が発生するケースが出てきます。言葉の解釈の違いから、言った言わないの論争まで…。「た:確かめる」は「ゆ:言っておく」ことが相手に認識されているかの確認でありましたが、同時に誤解がないことの確認と捉えることもできるでしょう。それでも標語で繰り返しているのは、仕事に限らず広義のコミュニケーションには誤解がつきものだからです。こればかりは特定のITツールが解決してくれる問題ではなく、対面や会議での認識合わせや、日々相互理解に務めることが大切なのだと感じます。
…さて、「ゆでたまご」が言わんとしていることはこんな感じです。ブログとしてもとてつもなく長い記事にここまで付き合ってくれた方がいるとは到底思えないのですが、もしここまで読んでくださった方がいらっしゃったら本当にありがとうございます。
最後に一つ。食べ物の「ほうれん草」は大量摂取すると、それに含まれるシュウ酸によって体内に結石を発生させる要因となるらしいです。対して食べ物の「ゆで卵」は、卵のコレステロールが高いので「一日n個以上食べてはいけない」という昔話もありましたが、近年の医学や生物学では特にそういった制限は無いとされています。
あの板東英二が今も健康でいるので、「ゆでたまご」はどんどん皆さんのお仕事に取り入れていただいて問題無いと思いますよ!